過酷な昇進試験に、なんとか合格しました。
これで私もすぐに昇進――。
するわけではありませんでした。
どうやら昇進待ちの人がいるため、実際に昇進するまで1年くらいかかるらしいのです。
試験に合格しても、まだ待つのか。
まあ、いいでしょう。
昇進したところで、仕事の内容が劇的に変わるわけではありません。むしろ中間管理職になり、上からも下からも挟まれて大変になるだけです。
私は窓際おじさんとして、ひっそり平和に生きていければ十分でした。
自分も「使えない人」だから昇進するのか?
前回も書きましたが、私のいた看護師の世界では、仕事のできる人や人柄のよい人ほど辞めていくように感じることがありました。
その一方で、
「この人、本当に大丈夫かな?」
と思う人が、なぜかスルスルと昇進していくこともあります。
そして、しばらくすると院外の部署へ異動していく。
もしかして、私も使えないから昇進試験を受けさせられたのか?
そんな疑問が頭をよぎりました。
もちろん、これは完全に私の主観です。尊敬できる上司もいました。
たまにですが。
とにかく私は、昇進を急ぐこともなく、目立たないようにひっそりと働いていました。
2023年、妻が突然「やっぱり留学したい」
そんな生活を送っていた2023年。
留学の夢など、私の中ではすっかり過去の話になっていました。
しかし、妻は違いました。
ある日、妻が言いました。
「やっぱり留学したい」
さらに、妻の後輩がスウェーデンへ留学しており、近いうちに帰国するとのこと。
「帰ってきたら、詳しく話を聞いてみよう」
こうして、止まっていたはずの留学計画が、再び動き始めました。
次の留学先はスウェーデン?
それから、夫婦でスウェーデンについて調べる日々が始まりました。
スウェーデンにはスウェーデン語がありますが、学校では英語で授業を行うことも多く、英語を話せる人も多いらしい。
さらに、妻が現地で働くことができれば、子どもたちも現地の学校に通える可能性があるとのことでした。
北欧。
自然。
教育。
福祉。
そして、サンタクロース。
気づけば北欧についての本を買い、家族で北欧生活を夢見る時期が始まっていました。
正確にはサンタクロースの故郷はフィンランドですが、その頃の私たちにとって北欧は、全部まとめて夢の世界でした。
妻が働ければ、家族でスウェーデンへ行ける
計画は単純でした。
スウェーデンの病院が妻を雇ってくれれば、家族で移住できるかもしれない。
もちろん、まだ何も決まっていません。
しかし妻は必要な資料を集め、現地の病院と連絡を取り始めました。
そして秋頃、ついにスウェーデンの病院とオンライン面接をすることになりました。
おお、本当に話が進んでいる。
妻はいいでしょう。
問題は私です。
昇進待機中なのに留学の可能性を上司へ報告
私は一応、昇進試験に合格し、昇進を待っている身分です。
そういえば、一緒に試験を受けた人たちは、いつの間にか昇進していました。
おかしいな。
私だけ、まだ何も変わっていません。
そんな状況でしたが、留学が決まってから突然報告するわけにもいきません。
私は上司に相談しました。
「妻が留学したいと言い出しておりまして……」
「まだ何も決まっていないのですが、向こうの病院に受け入れてもらえたら、家族でスウェーデンへ行くかもしれません」
何度も「まだ何も決まっていません」と言いました。
本当に何も決まっていなかったからです。
それでも、昇進待機中の職員が突然「スウェーデンへ行くかもしれない」と言い出したのです。
上司も困ったことでしょう。
スウェーデンの病院との面接結果は……
必要な資料を準備し、妻はスウェーデンの病院との面接に臨みました。
もし採用されたら、家族で北欧生活。
子どもたちは現地の学校へ通い、私は英語もスウェーデン語も分からないまま、北欧で暮らすことになります。
期待と不安の中、病院から伝えられた結果は――。
「現在は予算がないため、すぐに雇うことはできません」
残念ながら、すぐに採用とはなりませんでした。
妻はスウェーデンの病院へ連絡を続けた
それでも妻は諦めませんでした。
知人のつながりを頼りながら、スウェーデンの病院へ連絡を取り続けました。
海外の就職では、まず多くの病院や企業へ応募し、その中から興味を持ってくれたところと話が進むことも多いそうです。
しかし、私たちには子どもが3人います。
「やる気があります!」と伝えるためだけに、家族で北欧まで行くには、時間もお金もかかります。
現地へ行って直接自分たちをアピールすることもできず、なかなか話は進みませんでした。
そして、スウェーデン留学の計画は、少しずつ消えていきました。
ハワイに続き、スウェーデンも断念。
妻の中で消えていなかった留学の夢は、またしても実現しませんでした。
しかし、この話には一つ、大きな疑問が残っています。
あれ、俺の昇進は?
留学の可能性を報告したまま、私の昇進の話も、いつの間にかどこかへ消えていました。
そして、家族の留学計画はこれで終わった――。
このときの私は、そう思っていました。
しかし、妻の留学への執念は、こんなものではありませんでした。
続く。


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